筆者:コーチ くるたみ
はじめに
2019年3月2日。
Rush Gamingは、MLG(COD公式)のオンライン大会、Japan National Qualifierにて優勝を果たすことができました。
闘会議2019で行われたCoD日本代表戦の優勝・準優勝チームをそれぞれ2回ずつ制しての優勝。
コーチとして、そしてマネージャーとして、毎日6〜9時間程一緒に過ごしてきた私としても、これほどに嬉しい事はありませんでした。
今回は私達の振り返りと、読者の皆様に少しでも参考になればと思い、
私達Rush Gamingが昨年のCWL Vegas からどういう練習をしてきたかを、
まとめて記事にしたいと思います。
目まぐるしく変わった、チーム状況。
12月のCWLベガス後から3月のJapan National Qualifierの優勝まで、Rush Gamingでは状況が目まぐるしく変わってきました。
MainAR(最後尾からロングで戦うポジション)GPのストリーマー転向に始まり、
もともとAR(中、長距離武器)を持っていたHUNTが本人の希望によりSMG(近距離武器)へ転向。
SMGプレイヤーのLukeも同じく本人の希望によりARに転向しました。
新メンバー探しは難航しましたが、国内では非常に選手層が薄いMainARに国内トップの実力を持つ”Gorou”の入隊が決定。
いざやっとチーム体勢が完成したと思った矢先、
リーダーで実質的な司令塔のGreedZzの目の故障による戦線離脱・・。
大黒柱を失ったチームは急遽、Rush Gamingストリーマーの”Light”を期間限定で加えすぐ目の前に迫る日本代表決定戦へ挑むこととなりました。
Lightの加入は今後の勝利を目指すため、残された全員のレベルアップを図る意味でも重要な鍵を握っていました。
しかし日本代表決定戦では初日敗退という煮え湯を飲む形となり、チームはまた4人体勢に戻り、振り出しに戻ります。
そしてRush Gaming初のメンバーの公募を行った結果、
新たにARとして”Vebra”が約1ヶ月のトライアル期間を経て正式に加入。
そして今回、
5人メンバーが揃った状態での初の大会(公式のオンライン日本代表決定戦)で、
見事優勝することができました。
私達Rush Gamingは、これらの状況別でチームとしての取り組みを変化、微調整する必要がありました。
日々日々状況は刻一刻と変化していきます。
その時々で、最もパフォーマンスの高い練習ができるように試行錯誤してきたのが、
今回の結果に繋がっていると思います。
Rush Gamingの理想とする指揮系統
通常ほとんどのチームには司令塔がいて、チームに指示をだすという形式を取っているかと思います。
一方、Rush Gamingが理想とするチームの形態は、
GreedZzが司令塔をしていた時から一貫して
「全員が小さな司令塔として動けるチームを目指す」というものでした。
目まぐるしく展開が変わるCODというゲームの性質上、
とっさの判断や状況把握能力が最も大きく試合の展開を左右する要素であるためです。
1人の司令塔の支持の上で他全員が動くことよりも、
各個人が精度が高く、早い状況判断を行えるようになること。
その為に必要な、全員の情報量や知識量の平均値をあげる事。
これら目標が、最も効率よく勝利に近づけると言う考えのもと、
「全員が小さな司令塔になる」という体勢を理想とし、練習内容に組み込んでいます。
しかし実際には、
GreedZzが離脱するまで、彼が司令塔をするという形にチーム全体が甘んじていました。
また、Rush Gamingが目指す「全員が小さな司令塔」にはひとつ大きな難点があります。
それは、「チーム全体の動きが最も低い能力に平均化されてしまう」という点です。
全員が司令塔でありその場で最速の判断を下すため、
チームの中で一人でも戦略目標が違ったり、
一人が明らかに他のメンバーより攻略・知識量で劣る場合、そこに引っ張られてしまいます。
この難点を克服するために、
チーム全員で足並みを揃えて強くなっていく必要がありました。
全員が小さな司令塔であるために
全員が小さな司令塔である。
言うが易し 行うが難しです。
実際に全員が小さな司令塔であるためにはいくつか必要な要素があります。
それは全員が下記の各項目を有している必要があるという事です。
同じ戦略目標を共有している
細かな攻略情報を共有している
仲間を信頼している
必要なテクニックを有している
高いモチベーションを維持している
これらを共有し、ゲーム内での情報量(コールアウト)、各個人の知識量、を、高いレベルでの平均化を目指していく必要がありました。
勝ち方の確立
日本代表決定戦に敗北したあと、はじめに行ったのが
「CODeスポーツにおいて、どのように試合を行えば勝てるのか?」
という問いにはっきりとした解答をチームで持つことからはじめました。
これには試合に挑む前の体調管理やメンタル維持なども含まれますが、
最も注力したのは各モード(ハードポイント、サーチ&デストロイ、コントロール)での戦略目標の確立です。
とりわけ最も課題があり重要度が高い、
ハードポイント(以下HP)での勝ち方を確立するところからはじめました。 ※HPの戦略目標の確立ついて話すと、とても長くなってしまうので今回は省略します。
いずれ別の記事で書きたいと思います。
各モードでの戦略目標が確立してからは全員がその目標に向かって
「今チームに何が足りないのか?」
「個人の能力で今伸ばすべき項目は?」
などその時々の練習内容や個人目標の設定が明確にし、効率の良い練習を心がけ取り組みました。
OKRという手法も参考にしながら、目標と、それを達成する為の数値目標を設定してみるなど、
とにかく具体的に、明確に、個々人とチーム両方に目を向けて、全員での目標達成を目指しています。
攻略情報の共有
Rush Gamingは、全体での情報共有のために試合の
「キャスター画面(試合の観戦画面)」や海外プロの試合などを同じタイミングで全員で見る時間を作るようにしています。
みなさんも、これで苦労したことはありませんか?
オンラインで、同じ動画の同じタイミングであわせるというが、
今までは配信の時間ラグなどがあり私達も苦労していました。
ですがそれも、下記のツールを使えば簡単に可能になります。
Watch2Gether
というサイトです。
このサイトは、
接続した全員が同じタイミングでYoutubeやTwitchなどの動画を再生、
早送り巻き戻しができるサイトです。
一つの試合を見ると、感想や気がつく点が、選手各々違うことに気が付きます。
全員で同じタイミングで試合を見ることで、各々の気づいた事や戦術を一度に共有することができます。
振り返りの重要性
次に、マップごとの基本攻略事項をドキュメントにまとめて下図のようにチーム全体で共有もしています。
ドキュメントは一見してわかりやすいように説明しており、簡単に書くようにしています。
ここで重要なことなのですが、
簡潔に書いてるので、すぐに理解した気になってしまいがちです。
最も重要なのはドキュメントを元に、全員がゲーム内で同時にその内容を確認し、
全員が記憶する事です。
ドキュメントに書いてあることを思い出しながら、実際にゲーム内で確認しあう事で全員に知識が定着しやすくなります。
※脳の記憶の定着の仕組み的にも、効果的な方法だと考えています。
指揮官の役目をあえて新人に
Rush Gamingでは2018年12月のベガスからの3ヶ月、めまぐるしくメンバーが変わってきました。
なので、常に新人のレベルアップが最大のチーム課題になります。
新メンバーの教育に取り入れたアプローチは数多くあるのですが、
現在のRush Gamingの新メンバーVebraには、今までとは違うアプローチを取りました。
彼には、あえてチームへのコミットメントを上げるために、
サーチ&デストロイ(以下S&D)におけるIGL(In Game Leader=司令塔)を任せる事にしました。
S&Dの司令塔は、責任重大です。
毎ラウンド毎に状況判断、そして次のラウンドの戦略戦術をすべて指示する、
勝利に大きく関係するポジションですが、新人扱いは一切なしです。
これにはもう一つ理由があります。
Vebraの得意な事を伸ばす事が最速かつ最善の成長戦略だと考えたからです。
ある日、メンバー数名にS&Dのプロ勢の戦略調査を依頼したところ、最も繊密に、的確に情報収集を行い、チームへ共有したのが彼でした。
彼は、戦略的かつ客観的な試合分析ができるという特性があることがわかったのです。
そして、新人に実際、重要なポジションを与えた結果は、
さきのJapan National Qualifier でのS&Dにおける高い勝率が物語っています。
人は、与えられた役割に応じて成長が大きく変わる、
ということがチームとしても改めて大きな学びになりました。
おわりに
CWL Vegasからの3ヶ月だけでも、ここに書ききれないほど様々な練習を取り入れては改善させ、
必要性や効果が薄くなればまた新たな練習を取り入れて、試行錯誤しながらやってきました。
今回の記事では、チームの土台になりうる不変的な施策であろうと思うことを中心に紹介しました。
CODに限らず、チームスポーツ全てに通用するような事がメインになっていると思いますので、ここまで読んで頂いた方々に、少しでも参考になればなと思っています。
今後も細かい戦略などを紹介できるタイミングで紹介できたらと思っています。
今後とも、応援よろしくお願いいたします!
コーチ・くるたみ